2017年春のこと。
フィールドオブドリームズに、とんでもない選手がやってきた。
その選手のニックネームは、「シバソウ」。
キャッチボール、ノック、バッティング、あらゆる動きが、とにかくギッコンバッコンしていた。
新入団選手は、春に50メートル走のタイムを計測。
シバソウに、
「10秒超えたら、入団と共に即退団やぞーーっ!!」
と、ギャグで声かけをした。
ヨーイ!スタート!!!
バタバタバタ!
ストップウァッチは、刻々と経過。
7秒を超え。
8秒を超え。
ついに!9秒台。
が、ゴールはまだ切っていない。
ドタドタドターーーッ!!と、ゴーーール!
タイムは⁈
恐るべし!! 9秒88
当の本人は
「よっしゃーっ!10秒に間に合った!退団にならんですんだぁぁ」
と、安堵していた 笑
指導者達は、内心
「や、ヤバイ!遅すぎる…」
と思いながら、精一杯の笑顔で、
「お前、伸びしろ満載やわ! こっから、6秒台まで出せたら伝説になるぞ!!」と、言うしかなかった。
不器用ではあるが、コツコツとやる能力が彼にはあった。
そして、ウァーミングアップや、走りにおいて、必ず最後のゴールと示してある場所まで、誤魔化さずに取り組んでいた。
不器用だからこそ、人が見ていようが見てまいが、取り組む姿勢が変わらない選手だった。
3年生になると、上手く出来ない選手に向かって、「心を強く持て!!技術が足りない分は、気持ちでカバーをしろ!!」と、これまた不器用なやり方で、必死に伝えるようになっていった。
そんなシバソウは、春の計測で7秒3までタイムを縮めてきた。
そして、秋にはなんと体育祭で400m走で1位を獲得!
走る事で1番になったのは、人生初との事。
受験を控えているが、彼には宿題が残されてある。
6秒台まであと少し。
彼が達成すると、2017年入団選手は全員50m走6秒台を達成する事になる。
「足に自信がない、足が遅いと諦めている」
そんな後輩や、野球少年達は沢山いる。
そんな選手達に、夢と希望を与える選手になれ!!
9秒台から始まったが、6秒台を出した!
そんな男がいたと、語り継がれる選手に!!
「伝説の男」まで、あと少しだ。
最後まで、粘り強く。
そして、自分の誇りとなるものを、自分の手で、手に入れてほしいと願う。
健闘を祈る。